看護師は患者の安全を確保する責任があります。もし転職時の引き継ぎをきちんとしていなかった場合は、病院から訴えられることはあるのでしょうか?
結論からいえば、ほとんどありません。民法第628条には退職時の損害賠償について書かれており、「一方が過失により相手に損害を与えた場合は相手方に請求できる」と規定されています。しかし、この損害賠償請求ができるのは、看護師に過失がある場合、または病院に多大なる損害があった場合、その損害について病院側が立証できた場合という要件を満たしている必要があります。
つまりは引き継ぎをしなかった場合に、どれほどの損害がでるかをわかっていながら引き継ぎをしなかった、または不注意で引き継ぎをしなかったなどの場合は、看護師に過失があるため損害賠償請求できる要件にあてはまるでしょう。また、患者のケアに影響を与えた場合や、引き継ぎの不備が患者による病院への訴訟につながった場合もあてはまります。その理由は、病院側に重大な損害を与えていると考えられるからです。
しかし、最後に書かれてある「損害について病院側が立証」の部分が大変ハードルが高いため、病院側が訴えるケースが少ないようです。病院側が引き継ぎをしなかったことで生じた損害は、病院側が証明しなければなりません。引き継ぎをしなかったことで発生した因果関係やその損害額を調査するためには、多大な費用や労力がともないます。訴えたとしても、看護師ひとりに対してですから、たとえ損害賠償が発生したとしても雀の涙ほどでしょう。訴えても病院側は割に合わないため、よっぽどのことでないかぎり、引き継ぎをしなくても損害賠償請求はされないと思われます。
こういった情報もしっかりと把握しておくと、安心して転職することができるでしょう。
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